【議員懲罰への対応】議会基本条例の制定


議会基本条例

 

議会での議員に対する不当な懲罰に対し、対応(抵抗)していく方法として「議会基本条例」を活用しよう。

 

NPO法人公共政策研究所「全国自治基本条例・議会基本条例の施行状況(2021.4.1現在)」によれば、議会基本条例は、令和3年(2021年)4月1日現在、全国898の自治体で制定されています。平成18年5月に全国で最初に栗山町議会基本条例が施行されてから16年たち、制定率は政令指定都市で80%を超え、都道府県、市で65%を超えています。

議会基本条例とは、「議会の組織及び運営の方針と基本的ルールを定める条例」です。地方分権推進に伴い議会の役割と権限が強化されている一方、執行部の追認機関とも揶揄され、住民からは議会や議員に対して厳しい目が向けられている中、地方議会みずからが議会の活性化、議会の改革の取組みを積極的に行うようになり、その意思表明として制定が進められてきました。

条例の大きな柱は、「住民との関係の強化」と「政策形成機能の強化」です。

「住民との関係強化」の面では、会議の公開、議員の賛否公開、参考人・公聴会の充実、議会報告会や住民との意見交換会の開催、議会審議への住民参加、議会モニター制度、夜間・土日会議の開催などがあげられます。

「政策形成機能の強化」の面では、一問一答方式の導入、首長等への反問権の付与、積極的な議員間討論の実施、議決事項の追加、委員会による政策提言、議員提案条例の提出、外部専門家の活用、事務局体制の強化、通年議会制度などがあげられます。

議会基本条例は、新たな議会のあり方を条例の形で住民に示すと同時に、私たち議会はこうしていきますよ、という宣言でもあり、このようにやっていかなければならないという、議会をしばるものでもあります。いずれにせよ、条例制定は住民の福祉向上につながらなければ意味がありません。

しかし、現実には制定率の高さに押されたり、住民に問われたりして「そろそろ作らねば」と制定する所も多いようです。実際、時間をかけずに作ろうと思えば、他の議会のものをコピペすればできてしまいます。

とはいえ、いったん制定すれば、先述したように、それは議会の活動をしばります。書いてあることはやらなければなりません。閉鎖的で形式的な議会ほど、今までのやり方と書いてあることの間にギャップがあり、どうやって実行していくのか、現場に混乱が生じるでしょう。

 そこが、この条例の活用のしどころです。傍聴者を入れたがらなかったり、公開していない会議があったりしたら、「住民に開かれた議会って条例に書いてありますよね?」 住民の声を無視したり、疑問に答えなかったりしたら、「住民への説明責任を果たすって条例に書いてありますよね?」 なんだかんだ理由をつけて議会改革を渋る議員には、「これやらないと条例の理念に反しますよね?」と、ことあるごとに条例を持ち出して対応を迫れます。

 その議会でしか通用しない「掟」的なルールや、議員に対する懲罰的な理不尽な扱いについても、「それって議会基本条例に反しませんか?」と活用できます。

 

 まだ議会基本条例がない議会は、作る段階で条例の理念、憲法や法律に違反しないかや、各条文の意味、意義を全議員で確認し共有するのですから、そのプロセスこそ、今まで自分たちがやってきたことは違法だったかもしれない、議会人として恥ずかしかったかもしれない、世間の常識とかけ離れていたかもしれないと気づく(気づかせる)チャンスです。

近隣自治体の制定状況を調べたり、必要性を訴えたり、なんなら市民に要望を出してもらったりして条例をつくることを促しましょう。たとえ最初はコピペでも、育てていけばいいのです。

 

おりしも、新型コロナウイルス感染症対策でオンライン議会やSNS利用をどうするか、議会での男女共同参画をどう進めるかなど、話し合うべき課題があるタイミングです。すでに条例がある議会も条例を進化させ、住民福祉に寄与するとともに、謎ルールや理不尽な処分への対抗にも活用できる条例にしていきましょう!